発生土の利用
流動化処理土は、建設事業にともなって発生するほぼ全ての土を原料土として適用できる。 そこで従来,不良土として扱われていた細粒分を多く含み含水比が40~80%の粘土・シルトや泥土(第4種建設発生土および泥土)や、土取り場から採取した浄水場の汚泥、河川、湖沼等の底質土については、その処理・処分にコストが発生するので、これらを原料土として用いると、処分費が不要となり結果として建設コストが抑制される。 発生土の利用にあたっては以下のような点に留意する必要がある。
(1)有害物質
発生土は土壌汚染対策法などで指定された有害物質を含まないこと、建設汚泥を使う場合は廃棄物処理法に従う必要がある。
(2)木片・鉄線等の異物の混入
流動化処理土は解泥プラントから貯泥槽、混練プラント、アジテータ車へとパイプで圧送される場合が多い。そのため、処理土中に異物が混入するとパイプの閉塞を誘発することがある。 プラントで発生するトラブルのうち最も多いのは、木片や鉄線などの細長い異物の混入によるものである。したがって、発生土に木片や鉄線などの異物の混入を極カ避けるよう、十分に留意する必要がある。 特に、表土やビル等の解体現場からの発生土にはこのような異物の混入が多く見られる(写真1)。
(3)固化材を用いた地盤改良土の混入
固化材を用いて地盤改良した箇所からの掘削土は団粒化しており、プラントのトラブルやパイプ閉塞の原因となることがある。 特に、強度がqu=600kN/m2程度以上のものを用いる場合には、あらかじめ粒径を40mm程度以下に破砕してから用いる必要がある。 一方、qu=600kN/m2程度以下のあまり強度の高くないものについては、製造過程における混練機内での粉砕が可能で、そのまま使用しても支障はない。 また、地盤改良で生じる泥水または改良土で、まだ未反応の固化材分が混入しているような場合には、その未反応の固化材分を考慮して配合を行わないと強度が極端に大きくなる場合があるので、注意が必要である。
(4)pH
建設泥土・汚泥を原料土として使うときは泥土のpHを確認する。pHが高いものは固化材混入後の凝結等が懸念される。
掘削土の扱い
埋戻しなどの用途で打設された後に再掘削された流動化処理土は、建設発生土として扱うことができる。
ハンドショベルで掘削できる強度の目安は、一軸圧縮強さqu=600kN/m2 (現場CBR値30%) 程度までになる。バックホーで掘削できる目安は、qu=1,000kN/m2程度までになる。qu=1,000kN/m2程度の地盤を掘削する様子を写真1及び2に示す。
これらを再度、流動化処理土の原料土として利用することもできる。 ただし、qu=600kN/m2程度であればそのまま利用できるが、それ以上では粉砕する必要がある。
残土として処分する際は、適正な技術基準に則して製造された流動化処理土であることを受け入れ先に伝え、確認を得て処分をおこなう。
建設汚泥の利用
建設汚泥は産業廃棄物法の適用を受ける。
シールド工事で発生する建設汚泥を流動化処理土の原料土として使うときは、その内容物の性状や有害性などの把握が容易なため、例えば図1のような工程を経て品質安定化の作業がなされる。
一方、複数の現場から収集して貯泥される建設汚泥を原料土として使うときは、その内容物の把握が難しいので、土の種類が同じ地盤から発生した建設汚泥を選別して、または土の種類毎にタンクやピットを設置して、貯泥することが求められる。 このときも図1に示すような受入れと製造工程を経て品質安定化の作業をすることが必要になる。
複数の現場から集められる建設汚泥は、目視で土の性状を把握するのが難しいので、原料土の物理試験を実施したり土の土性に係わる情報を入手することは非常に重要な工程になる。 この工程を怠ると、配合の適用性が曖昧になり、また時には失われるので、固まらない流動化処理土や大量のブリージング水が浮上くような粗悪な品質に至ることになる。
また、物理的性質の不明な建設汚泥を貯泥して、これを原料土として流動化処理土として製造しても「流動化処理土利用技術マニュアル」に記載された『3.4 要求品質の設定』の条件に適うか否かは保証の限りではないことに留意する必要がある。
建設汚泥は「『国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12 年法律第100 号』により公共工事での調達を推進するよう努める」記述がある(以降の「リサイクル指針」の説明参照)。
建設汚泥を再生処理した建設汚泥処理物については、あらかじめ具体的な用途,再生利用先が確保されていなければ、結局は不要物として処分される可能性が高いことから「建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針について」(平成17年7月25日,環廃産(050725002))に,一から五で構成される廃棄物か否か、の判断基準が示されている。 文中には、流動化処理土が建設汚泥処理物の一例として、また、流動化処理工法が建設汚泥の再利用の方法の一例として、紹介されている。
判断基準の「一の『物の性状』」では、冒頭「当該建設汚泥処理物が再生利用の用途に要求される品質を満たし、かつ飛散・流出、悪臭の発生などの生活環境の保全上の障害が生ずるおそれのないものであること、当該建設汚泥処理物がこの基準を満たさない場合には、通常このことのみをもって廃棄物に該当するものと解して差し支えない」と規定されている。 また、建設汚泥を原料土とする流動化処理土にあっては「用途に要求される品質を満たす」ことが必須となっていることに留意する。 要求される品質としては、「流動化処理土利用技術本マニュアル」の「3.4 要求品質の設定」と「4.7 施工(品質)管理」に示される技術基準があげられる。
また、国土交通省の直轄工事で建設汚泥から流動化処理土を製造し使用する際、「建設汚泥再生利用技術マニュアル」の一部に説明が述べられている。 このなかで「(建設汚泥の)排出側は,処理方法,技術基準等を記した『利用計画書』を作成して、排出側工事と利用者側工事の双方の発注者の確認を受ける」旨の記載がある。 マニュアルには「建設汚泥を原料土とする流動化処理土は、受け入れる発注者が技術基準などを踏まえて適切に製造されたものであることをあらかじめ確認している」ことが記載されている。
その他の原料
生コンのアジテータ車内に残留するセメント含有スラッジ、溶融スラグ、焼却灰、フライアッシュなど、土以外の微細な粒状物質を原料土として、あるいは土に当該物質を混ぜて原料土として、流動化処理土を製造することは技術的に可能である。
建設汚泥と同様に、内容物について説明をすることなく、単に流動化処理土と利用者に言うと、利用者は原材料は土と誤認するおそれがある。上記のセメント含有スラッジなどは産業廃棄物に指定されていて、内容物の説明を怠ると品質などの誤認惹起(意図的に利用者に誤った認識を抱かせる)に関する法律にも触れる可能性がある。 製造者は利用者に原材料の説明をすることが必要で、利用者もこの点に十分に注意する必要がある。
六価クロム
流動化処理土はセメント及びセメント系固化材を使用する。 発生土と固化材の配合等の条件によっては六価クロムが土壌環境基準を超える濃度で溶出するおそれがある。
流動化処理土の利用者はこれに関して「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び 改良土の再利用に関する当面の措置について」(平成12年3月24日,建設省技調発第48号)に留意されたい。 この通達では、使用予定の発生土と固化材による六価クロム溶出試験を実施し、六価クロム溶出量が土壌環境基準以下であることを確認すること、土壌環境基準を超える場合は六価クロムの溶出が少ない固化材を使用するなどの適切な措置を講じること、が示されている。
グリーン調達(環境物品等の調達)
平成13年4月よりグリーン購入法が施行された。当機構では「公共工事のグリーン調達品目提案公募」(国土交通省大臣官房技術調査課)に「品目名:流動化処理工法」等を提案した。 平成15年3月に「提案品目名『流動化処理工法』、統合品目名『流動化処理による建設汚泥再生処理工法』、検討結果(分類)『特定調達品目』が閣議決定された旨の通知が、(環境省総合環境政策局環境経済課、国土交通省大臣官房技術調査課、経済産業省産業技術環境局環境政策課)から届いた。
平成28年度においては、国土交通省により『国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12 年法律第100 号)第7 条第1 項の規定に基づき、環境物品等の調達の推進を図るための方針』が公表されている。 流動化処理に関する内容について示す。
『資材(建設汚泥)』
資材として建設汚泥から再生した処理土についての記載があり、流動化処理土も該当する。関連個所を抜粋して原文を以下に示す。
・建設汚泥から再生した処理土については、『建設汚泥処理土利用技術基準』(国官技第50号、国官総第137号、国営計第41号、平成18年6月12日)及び『建設汚泥の再生利用に関するガイドライン』(国官技第46号、国官総第128号、国営計第36号、国総事第19号、平成18年6 月12日)に基づき、 再資源化施設への距離、建設発生土の工事間利用、再生材の発生状況などを留意しつつ、埋戻し材、盛土材、裏込め材等において、その使用を推進する。
『現場で使う工法(粘性土等と建設汚泥)』
粘性土等の低品質の土と建設汚泥を現場で再利用する工法について記載があり、流動化処理工法も該当する。関連個所を抜粋して原文を以下に示す。
・低品質土有効利用工法については、粘性土等の低品質土が発生する現場において、現場内で土質改良や施工上の工夫を行うことにより、再利用できる工種等がある工事において、その使用を推進する。
なお、土質改良等については、「発生土利用基準について」(国官技第112 号、国官総第309号、国営計第59号、平成18年8月10日)に基づき、品質の確保に留意する。
・建設汚泥再生処理工法については、建設汚泥が発生する現場または他の現場において、建設汚泥を再生した処理土が利用できる工種がある場合に再生処理設備の設置場所、稼働時の騒音及び振動等に留意しつつ、その使用を推進する。
なお、再生処理土については、「建設汚泥処理土利用技術基準」(国官技第50号、国官総第137号、国営計第41号、平成18年6月12日) 及び「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」(国官技第46号、国官総第128号、国営計第36号、国総事第19号、平成18年6月12日)、流動化処理土については「流動化処理土利用技術マニ ュアル」(建設省土木研究所編、平成9 年12 月)に基づき、品質の確保に留意する。