流動化処理工法研究機構

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流動化処理土の施工とはどんなもの?

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流動化処理土の施工とはどんなもの?

流動化処理土の製造プラントの種類

流動化処理土の製造を行うプラントは施工現場の周辺の状況、打設量の大小、施工対象の構造物の性格に応じて、プラントの種類を選択することになります。

(1)現場設置プラント

 施工現場に近接してプラントを組み立てる場所があり、周辺環境などの諸条件が整えば、図-1(「流動化処理土とは」-「施工方法」参照)に示した必要なプラント構成装置を組み合わせ、写真-1に例示したような現場設置型のプラントを設けることができます。
 (a)は三分割してトラックで搬送し、現地で組み立てられる大型のもので、(b)は、やや小型で、運搬、移動が相対的に容易な形式のプラントです。

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(2) 車載式移動プラント

 施工現場の近くに移動可能な、材料の混合、送泥装置を一纏めに車載したプラントで、製造能力は相対的に下がりますが、現地での組立作業を省ける点で有利なプラントです。写真-2に示しますように、(1)の形式のプラントを車載式にした(a)の形式や、コンクリートミキサーに準じた装置で、現場において流動化処理土を製造する(b)の自走式の形式、更に(c)のように、材料を投入すれば、混合と運搬の両方が可能な形式のものが考案され小規模工事に稼働しています。

(3) 常設プラント

 都市域、及びその周辺など、需要の大きい地域、あるいは長期間に渉って打設量が多量になる現場では、コンクリートと同じように、大型の常設プラントを設けて、熟練した技術者により配合、混合を調整し、打設箇所に搬送する方が、品質の安定性、管理の確実性を計る面からも適当と思います。

 これらプラントは、常設の生コンプラントのように、求められた品質に合致する製品を製造し、相手方の現場に搬送する方式のもの(写真-3,(a)の例)、及び特定の大規模な工事に限定的に供給すべく設置されたもの(写真-3,(b)の例)が多く利用されています。いずれも(1)、(2)に比べて大型なプラントです。

 流動化処理工法研究機構の会員が管理・運営しているプラントの、担当会社名、所在地、並びに製造能力、配置分布をまとめましたのでご参考にして下さい。

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流動化処理土の運搬

プラントで混合された流動化処理土は、施工現場まで運搬され打設されます。

  常設プラントから配送する場合のように、かなりの距離を運搬する場合は、生コンの運搬に用いる10t級のアジテータ車が用いられます。ただし、流動化処理土の場合は、コンクリートより軽く流動性が高いため、路面の不整箇所で外へ跳ね出すおそれがあるため、積載量は4~5mに抑えています。

 運搬が相当に長距離になる場合、特に気温の上がる夏期では、運搬中に処理土の流動性(フロー値)の低下が懸念されます。そのために使用する材料に関しての、混合後の経過時間、気温とフロー値の低下の傾向を前もって試験によって把握しておくことを心がけています。また、固化遅延剤などを使用することもあります。

流動化処理土の打設

運搬されてきた流動化処理土を現場に打設する方法は次の通りです

a)直接投入方式(直投式)

 運搬されてきた流動化処理土を、必要ならば打設箇所に小運搬するか、あるいは直接、シュート、パイプ等を介して流し込む方法です。打設操作は簡便で、スランプロスも少なく、打設状況の確認も容易な方法です。

b)ポンプ圧送方式

 コンクリートの打設に用いるコンクリートポンプを流用して、圧送管で処理土を送り込む方式です。圧送管の筒先を移動するだけで打設箇所を容易に移動できる利点があり、打設現場が狭く、埋設物が錯綜している場合などに適しています。ポンプの圧を高めれば200m程度の距離までは打設が可能とされています。
 高密度の流動化処理土の場合は、送泥距離が増すとスランプロスが大きくなることがありますので、前もって泥水密度を調整するなどの注意が必要です。
 流動化処理土を利用して不要になった地下空洞、廃坑、あるいは軟弱地盤地域に建設された建物の床下に供用後発生した空洞等を充填する場合など、複雑で入り組んだ隙間、空間を充填するためには、ポンプ圧送が有効に用いられています。
 その際の充填の手順、充填の確認について我々は多くのノウハウを得ております。

流動化処理工法の、埋設・埋戻しに際しての長所

a)埋戻し土の再掘削が可能です

 都市の街路下には各種の地下構造物、埋設管類が錯綜して設置されており、補修、新設のために再掘削、埋戻しが繰り返されていることはご存知の通りです。流動化処理土による埋戻しは、複雑に入り組んだ隙間にしっかりと充填できることは当然ですが、固まりすぎて再掘削が困難では役に立ちません。
 これまでの経験から、28日養生の一軸圧縮強さが0.5~1MPa(5~10Kgf/cm2)程度までに抑えれば、再掘削は十分に可能であるとされています。

b)既設管類の受け防護工が省略できます

 既設管類の下部に新設の埋設工事を行い埋戻しをしたい場合、埋設管を保持するために受け防護工が必要でしたが、吊った状態の既設管路下を、浮き上がりを防止しつつ、流動化処理土を打設することで受け防護工の設置を省くことができます

c)路床工としての打設直後から高い信頼性が確保できます

 既設街路の埋設工事において、埋戻し部、路床部の締固めが限られた狭い空間で行う難しさによる、良好な締固め状態を得られない実状を補うために、上部の舗装を仮復旧して供用し、路盤の落ち着きを待って本舗装をする場合が多いようです。
 しかし、これまでは必要な処置だったと思いますが、流動化処理工法で埋め戻した場合では、打設時に舗装復旧時に必要な支持性能を確保できるように、固化時間の調整を含めて配合設計することが可能ですし、施工後の変形も殆ど見られませんから、実用上は仮の舗装を行う必要性はないと信じます。

d)地下の漏水による埋戻し部の浸食が防止できます

 流動化処理土は、前述のように、細粒分からなる泥水で固化された部分が、密実な粗礫をしっかりと拘束していますので、強度も原則として普通の土よりは高く、透水係数も10-5~10-7cm/secとはるかに小さく、実質的に不透水性です。
 従来の緩い山砂で埋め戻されていた場合のように地下漏水が埋戻し部に集まるおそれもなく、浸食、流失される心配は皆無に近いと信じています。

e)埋戻し部の地震時における液状化を防止できます

 地下水位の高い地域で、緩い山砂で埋め戻された部分は、地震時に液状化の心配があることは、多くの震災例から明らかになっています。流動化処理土は固化材で固められた材料ですから、地盤工学的には粘着力cに富んだ材料で、地震時液状化のおそれのある、地下水で飽和された緩い埋戻し砂とは全く異なった材料と言えますから、液状化の心配はまずありません。

流動化処理工法の適用例

 「流動化処理工法」の利用実績もお陰様で、大分、多くなってきました。その実例を沢山な写真を添えてご覧に入れたいと思いますが、残念なことにこの工法の現場は薄暗く、泥まみれの汚れた景観である場合が多く、とても絵にはなりません。よってここでは、都合良く抽象化したポンチ画で、取り敢えずご説明することをお許し下さい。

(1) 各種ライフライン等の埋設物の埋戻し

 都市の地下には電気、上水、ガス等の供給施設、下水、電信電話などの、多くのライフラインが錯綜した状態で埋設されています。これらは新設、改修、保全点検などのために掘削、埋設、埋戻しの作業が屡々繰り返し行われているのを、よく見かけられると思います。

 図-1、2に図示したように、埋設されたライフラインの周囲は、もともとの地山と匹敵する安定性を保つように、均質に埋め戻すことが求められますが、狭い隙間に土を良く締固めるのは至難の業です。さらさらした砂を水と一緒に流し込んだ水締め工法がよいともされてきましたが、そのような粒径の揃った川砂の採取は、今の日本では殆どが不可能ですから、このような工法は殆ど採用できません。


図-1 埋設管の埋戻し

 配合次第で再掘削も容易ですし、地下水位の高い地区、水中での施工も問題ありません。また、前にも述べたように、地震時の地盤の液状化による浮き上がり等の心配も全くありません。



図-2 ケーブル等の埋戻し

 街路下での工事では、舗装の早期復旧が必要です。流動化処理土の埋戻し部を舗装の路床、あるいは路盤に匹敵する支持力にできますので、在来工法の場合のように舗装の仮復旧を必要としないことは前述の通りです。作業時間の制約のある場合には、固化速度の早い特殊固化材の使用、更に混合時の温度を高めることなどで、著しく固化を早めることも可能です。

 「流動化処理工法」はそのために開発されたとも言える工法ですから、各方面の使用者からは好評を得ております。配合次第で再掘削も容易ですし、地下水位の高い地区、水中での施工も問題ありません。また、前にも述べたように、地震時の地盤の液状化による浮き上がり等の心配も全くありません。

 街路下での工事では、舗装の早期復旧が必要です。流動化処理土の埋戻し部を舗装の路床、あるいは路盤に匹敵する支持力にできますので、在来工法の場合のように舗装の仮復旧を必要としないことは前述の通りです。作業時間の制約のある場合には、固化速度の早い特殊固化材の使用、更に混合時の温度を高めることなどで、著しく固化を早めることも可能です。

(2) 共同溝、地下鉄函体及び駅舎、高架橋橋脚など、大型地下構造物の埋戻し

 これら重要な地下構造物は地震時など、異常に大きな土圧を受けても安全であることが求められますから、埋戻し部も、設計時に考えられた通りに、地山に全く遜色のない性状の、恒久性のある地盤にしておかなければなりません。

 特に地下鉄の駅舎のように複雑な形状の構造体の埋戻しは、完全な埋戻し充填が困難なため、地下水の浸食、集中がおこりやすく、埋戻し土砂の流失による地盤反力の低下、地下空洞の発達による路面陥没、供用中の函体内への漏水の原因になりやすいので、埋戻しの行き渡りが確実な流動化処理土が推奨できます。

 図-3に例示した大型共同溝の場合には、地盤反力の確保を主体とした側壁部と舗装、交通荷重を意識した天端部とは機能の違いを考えた配合設計が必要なことも十分あり得ますが、その要求に応えることも可能です。


図-3 共同溝の埋戻し

 大型共同溝の場合には、地盤反力の確保を主体とした側壁部と舗装、交通荷重を意識した天端部とは機能の違いを考えた配合設計が必要なことも十分あり得ますが、その要求に応えることも可能です。

(3)建築構造物の埋戻し

 図-4に例示したのは、安定度の比較的高い傾斜地を切土して建てられた建物の埋戻しに、地山の劣化を抑えるべく用いられた場合の例です。
 流動化処理土が建築基礎に多く用いられた例の中では、図-5のように、軟弱地盤に造成された土地で、杭基礎で支持された建物の床下に、供用中に進行した地盤の沈下に伴って発生してしまった大きな空隙の充填が最も多かったと思います。

 極端な場合は人が入れるほどの大きさになったこともありますが、全面に渉る広い範囲に空隙、空洞が広がりがちです。更に土を充填すれば沈下が進んでしまうと危惧される向きもありますが、充填材自体にはさほど支持力は要求されませんので、密度がそれ程高くない流動化処理土ならば、以後の沈下を促進させるおそれはありませんし、むしろ、その高い流動性によって、広範な狭い複雑な形状の空隙を完全に充填することに成功した、多くの施工実績を持っています。


図-4 建築物の埋戻し

 安定度の比較的高い傾斜地を切土して建てられた建物の埋戻しに、地山の劣化を抑えるべく用いられた場合の例です。



図-5 軟弱地盤の沈下で
生じた建物床下空隙の充填

   高い流動性によって、広範な狭い複雑な形状の空隙を完全に充填することに成功した、多くの施工実績を持っています。

(4)路面下空洞の埋戻し

 都市の街路の舗装の下には、予想もしなかった地中の漏水が路床土を浸食してしまったことで、路盤材が脱落し、表層の舗装だけを残したことによる路面下空洞の発達が、徐々に進行している例が多いようです。それが、最悪の路面陥没となって災害を起こす結果となって表れるのを防ぎたいものです。

 ですから陥没を起こす事前に、その存在、規模を探知して、図-6に示すように表層から削孔した小口径の孔から、流動性に富んだ「流動化処理土」を注入、空隙を完全に充填しさえすれば、未然に路面陥没による事故を防ぐことができるはずで、我々はそれに関して成功した実施例を持っています。


図-6 路面下空洞の充填

 表層から削孔した小口径の孔から、流動性に富んだ「流動化処理土」を注入、空隙を完全に充填しさえすれば、未然に路面陥没による事故を防ぐことができるはずで、我々はそれに関して成功した実施例を持っています。

(5)盛土工の補助的工法として

 図-7に橋台の裏込め盛土部に流動化処理工法を併用した場合を想定しました。橋台裏込めは転圧機械の締固めがしにくい部分ですので、供用後、盛土と橋梁部との段差が生じやすく、維持補修の際の悩みになる箇所と言われています。

 良質の砂を利用したり、ソイルセメント等の安定処理土利用が用いられましたが、既に軟弱地盤地帯での橋台の負担を軽減すべく、気泡混合盛土で橋台裏込めが実際に施工されていることから見ても、同じ発想で、一般の橋台で、図-7のように「流動化処理土」による自己充填的な盛り立ても考えられると思います。

 また、高速道路では舗装の平坦性と乗り心地の良さを保つために、橋梁部の舗装と盛土部の舗装との連続化を計るべく、連続アーチ橋の上部に盛土する、いわゆる地覆アーチ橋の採用が計られています。そのような平坦性のない不整形な構造物上での盛土の転圧施工が困難なことを考えると、そのような部分の充填・盛り立てにあたっては「流動化処理工法」が他の追従を許さぬ機能を果たすものと信じます。


図-7 橋台の裏込め部への利用

 橋台の裏込め盛土部に流動化処理工法を併用した場合を想定しました。橋台裏込めは転圧機械の締固めがしにくい部分ですので、供用後、盛土と橋梁部との段差が生じやすく、維持補修の際の悩みになる箇所と言われています。


(6)水中盛土工

 水中に盛土する場合、転圧機械による締固めは水面下では不可能ですから、良質土砂の浚渫によるしか考えられませんでした。しかし、図-8のような水際の護岸の裏込めに当たって、「流動化処理土」による施工が既に行われています。

 東京湾アクアラインのシールドトンネルの川崎側、並びに海ほたる側からの海底に潜る斜路として、事前混合盛土方式の水中盛土工法が採用されました。これは精選された山砂、泥岩を解泥した細粒土、それに固化材を配合した高品質の流動化処理土と見なしうる材料で、立派な水中盛土工を行った例と見ることができます。


図-8 護岸のための水中裏込め工

 水中に盛土する場合、転圧機械による締固めは水面下では不可能ですから、良質土砂の浚渫によるしか考えられませんでした。しかし、水際の護岸の裏込めに当たって、「流動化処理土」による施工が既に行われています。


(7)高強度の流動化処理土の例

 営団地下鉄南北線の建設に当たって、図-9に示したような複線シールドの軌道下の半月形の空間(インバート部)の充填に当たって、従来は捨てコンクリート(圧縮強度100Kgf/cm[10MPa])を用いていたのを、建設副産物の有効利用の一環として、泥水シールド工事で発生する泥にまみれた山砂を用いた高強度の流動化処理土の使用を試みられた結果、圧縮強度、7~8 MPa 程度の流動化処理土を作製しうることを確かめて、実荷重の繰り返しにも耐えうる実験の検証を得て、本工事に採用されています。泥まみれになった掘削砂でも、これ程の強度が出るとは思いませんでしたが、これで、コンクリートに準じたものも作れる自信を深めました。

 かって、原子力発電所などの重要構造物の埋戻しに用いられた、マンメイドロックの名の「人工岩盤」、また、東京湾アクアラインの水中盛土のような、良質な砂、精選された粘土泥水によって、先人が製造された「事前混合盛土」の実例から見ても、流動化処理土は配合次第で、我々の想像を超えた、普通の地土程度のものからコンクリートに準ずるものにまで、広範な多様な性能を持つ、目的に応じた「土を主体とした新しい構造材料」となりうる可能性を感じています。


図-9 地下鉄複線シールドの
インバート部への利用

 複線シールドの軌道下の半月形の空間(インバート部)の充填に当たって、従来は捨てコンクリート(圧縮強度100Kgf/cm2[10MPa])を用いていたのを、建設副産物の有効利用の一環として、泥水シールド工事で発生する泥にまみれた山砂を用いた高強度の流動化処理土の使用を試みられた結果、圧縮強度、7~8 MPa 程度の流動化処理土を作製しうることを確かめて、実荷重の繰り返しにも耐えうる実験の検証を得て、本工事に採用されています。