流動化処理工法研究機構

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「流動化処理土」とはどんなもの?

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「流動化処理土」とはどんなもの?

動画によるご説明

流動化処理工法の全体像を把握して頂くために動画を用意しました。 ここでは現場にプラントを設置して流動化処理土を製造する施工を紹介します。 常設のプラントで流動化処理土を製造する場合もほぼ同じ施工になります。
流動化処理土は発生土を原料土として使いますが、この動画では3タイプある製造工程の内、1)低品質の発生土(粘性土)に水を加え解泥し粘度調整用の泥水を製造し、2)次に砂質系の発生土を加え、3)最後に固化材を添加して混練りする、ケースを紹介します。
音声による説明を動画と合わせてお聞きください。

ご挨拶(工法開発の経緯について)

真に信頼できる埋戻し・裏込め工法を目指して

  昭和50年代半ば頃だったでしょうか。それまではあまり気になりませんでしたが、構造物基礎や地中構造物、及び都市の各種ライフライン等の埋戻しや裏込めに際して、施工後、時を経て当該路面に陥没や、不測の不陸が生じはじめたことによる障害、事故が多発し始めました。

 その以前は、このような地下構造物の埋戻し工事の際に採用されていた埋戻し工法には、良質な砂、砂利を主体とした「川砂」で水締め打設する方法が主に用いられてきていましたが、その頃から「川砂」の採取が制限されるようになって、代わりに、「山砂」が使われるようになりました。

 しかし、同じ「砂」と言っても、「山砂」はかなりの量のシルト、粘土の細粒分も含んだ、いわば「砂質土」と称すべきもので、決して「砂」に代わる材料ではなかったのです。
従って、「砂質土」を用いて地山との間に残された狭隘な掘削空間を埋戻し、十分な締固めがしにくいままに供用した場合には、埋戻し部の緩い砂質土は地下漏水によって侵食され始め、結果として地中に思わぬ空洞を発達させてしまったために、路面の不陸、ひいては路面陥没につながる災害の原因になっていたと判断されますし、確かに下水管内に多量の流出砂質土の堆積が確認されました。

 この実情を憂い、それに誘引きされたと思われる不測の地中空洞の補填を含めて、締固め不要な、いわば「土のコンクリート工」とも見なせる「土の流動化処理工法」の開発を試みました。勿論、それ以前に開発された、より高品質な埋戻し材や、水中盛土技術をも参考にして、より入手し易い土質材料を活用し、用途別に、技術的にも、経済的にも、より広範な要求に対応が可能な当工法の開発を続けてきました。そして平成になって、先の建設省総合技術開発プロジェクト「建設副産物の発生抑制・再生利用技術の開発」の一環として、当時の建設省土木研究所と日本建設業経営協会中央技術研究所が行った、流動化処理土の利用技術に関する4年間の共同研究により、流動化処理工法の効用と、その実用性の第一段階の確認を得ることができました。

 本機構の設立前、及び設立後の我々の流動化処理土の施工実績の推移を図示しました。平成10年、11年にかけて東西都市圏において大規模な地下鉄関連工事が集中したこともあって、その間の実績は急激に増加し、それに応ずることで技術をさらに習熟し得たことは幸せでした。そしてこの間、当工法に協賛された会員の分布が都市域に限られず、全国規模に広がり始めたことは大変心強く思います。

 この段階で、本機構に対する建設業界の広いご理解により、「流動化処理工法」は一応の市民権を得たものと感じております。しかし、その有用性が認められ、施工対象も、施工量も増えるにつれて、個別に当工法、並びに処理土に関する技術的研究、普及に励むことが許されぬ時流を感じ、流動化処理工法に関連する特許権等の監理、並びに技術指導、広報活動を主務とする組織が併存されるべきとの判断から、別組織として新たに「(有)流動化処理工法総合監理」を平成13年末に発足しました。
当組織は本機構と密接な連携関係にあることが必要なため、流動化処理工法研究機構の特別会員として迎え、今後は、より実務的に流動化処理工法の発展を支える基盤となるものと信じております。

 なお、この結果、独立行政法人土木研究所、有限会社流動化処理工法総合監理、及び社団法人日本建設業経営協会の三者間には、平成14年10月1日付で「流動化処理工法パテント・プール契約」が締結されていることを追記いたします。

流動化処理工法の生い立ち

 「流動化処理工法」と聞かれると、多くの方が当今、問題になっている建設副産物である、建設発生土、泥土の有効な再利用のための工法として開発された、新しい工法と理解しておられるようです。それも間違いとは言い切れませんが、実はこの工法の生い立ちは、未だ建設副産物の処理が問題になる以前の、昭和60年以前に遡る経緯があるのです。 現在、この工法はかなり広く建設業界に受け入れられるようになりましたので、「流動化処理土、流動化処理工法」の命名者と、自ら任じている本機構の名誉理事長の久野悟郎の懐旧談の形をかりて、この工法の出生の過程をご説明したいと思います。
 今後、ご利用頂く上に、お役に立つと信じますので、少し長くなりますが、ご興味があれば是非お読み下さるようお願いいたします。

解説1
盛土などの土構造物の築造には締固めが不可欠であるが、
それを妨げる特殊事情が日本では多すぎる

 昭和20年代半ば、敗戦直後の日本は、全く遅れていた機械化土工の黎明期でした。土の締固めの先進技術を貪欲に学んだ私達は、日本の最初の本格的高速道路の建設であった名神を含めて、多くの現場で締固め施工をたっぷりと体験する機会に恵まれました。そして良質な土を適度な水分状態で、適切な締固め機械でよく締固めると、非常に安定した支持力のある盛土、路床・路盤などの土構造物を造成できることを身に沁みて体験し、心底から理解することができました。
 また、それと並行して、彼等の知識では克服し得ない日本の気象、土質に起因する特殊性の存在を知り、各地での、多くの締固め施工に接している内に、何となく外国から導入された立派な締固め・転圧機械が、十分に機能を発揮できない、次に列挙するような条件の現場が、日本には多すぎるとの不安を感じ始めていました。


例えば次のような現場事例に当たって、私達はどう対応してきたでしょうか

  1. 先進欧米諸国には見られなかった、関東ロームなどの、土工機械が土をこね返すと、非常に軟弱化する高含水比火山灰質粘性土に遭遇することが多い。
  2. 山地の多い日本は、地形、水系、都市環境が複雑に入り組んでいて、大型土工機械が効果的に稼働できる作業空間に恵まれず、土工の施工効率が悪い
  3. 日本の大都市では、各種ライフラインの埋設、地下鉄の駅舎、共同溝等の複雑な形状の構造物の埋戻し・充填に適した多量な良質な砂質土に恵まれず、それら狭い空間へしっかりと土を締固める適当な方策が見当たらなかった。

 このように、土は良く締め固めた方が良いと知りながら、それが適えられない現場条件が多すぎるのに慣れてしまった我々は、施工者達の不充分な出来映えを、ただ、単に”施工が悪い”と責めるだけで凌いでいた傾向があったのではないでしょうか。
 特に(3)の都市土木に多い埋戻し・充填の場合には、品質基準で一般の盛土工と同等の締固め度を規定しても、これまでに得た盛土の締固め技術では、それを満たすのは不可能な場合が殆どであることを、技術者であれば当然、知っていたはずです。


 結果として不十分な締固め状態で埋戻された土砂が、地下水の流動、あるいは上水道の漏水になどによって浸食され続けて、やがては街路の路面陥没に繋がりかねない空洞が、都市の地下に発達し続けている実態に目を反らせることは許されません。事故が発生してから、建設業者の欠陥施工と非難するのは筋違いなことです。

解説2
どんなに努力しても締固めが難しい場合はどうしたらよいか?
「コンクリート」を真似て「土のコンクリート」を作る試み

 「締固め」が難しいのならば、最初から「締固め不要な」工法を模索すべきだと、私達は昭和60年少し前頃から思い始めました。
 すぐ身近に良いお手本がありました。狭い型枠の中の複雑に配置された鉄筋間に、本当はもっと水分が少ない方が良いのに、セメントと砂、利砂を、仕方なく泥状に配合して流し込んでいるコンクリート工事でした。


 ですからコンクリートでも、なるべく添加水分の少ないものが望ましく、広い作業空間に恵まれたダム工事やコンクリート舗装では、ちょうど湿った砂礫質土のようなコンクリートを、土の場合と同じ転圧機械で締め固め始めたではありませんか、それならば、その逆を行って、種々な配合の流動性のある「土のコンクリート」を作ってみよう、それなら、狭い空間でも締固めが不要な打設ができるはずではないかとの無謀な思いつき、それが「流動化処理土」の原点でした。


 強いコンクリートに用いる砂、砂利では、それを汚す粘土っぽい土が混ざっていてはいけないと習いました。しかし、土構造物はコンクリート程の強さは要りませんから、いっそ、粘土、シルトのたっぷり入った泥水に、砂や礫を混ぜ、それにセメントや石灰などの固化材を配合すると、どんなものができるか試み始めたのが「流動化処理工法」の発端でした。幸いにも、その頃、非常に多量な水を含んだ泥でも、固化させることが可能なセメント系の固化材の開発が進んでいたのも好都合な刺激になりました。

「流動化処理土」とはどんなもの?

 いわば「土のコンクリート」と言うべき「流動化処理土」が、いわゆる「土」 や本物の「コンクリート」と比べて、どんな性能の材料か、どんな泥でも本当に固まることが出来るのか、締固めでは密度を高くすることが必須であるが、流動化処理でも密度の高い処理土を実際に作ることができるのか、そして、それが本当に必要なのか、また、流動化処理土に欠点があるとすれば、それを補う方策があるか、など、色々の疑問を持たれるのはもっともなことです。
 流動化処理土が世に出て、まだ二十年にはなりません。コンクリートが百五十年を越える歴史を持つのと比べれば、まだ、分からないことが山積しているのも当然かも知れませんが、ここに、今までに分かっている目新しい性能を説明します。
 そして、今後、流動化処理土はどうあるべきか、考えを述べさせてもらいます。

解説3
「流動化処理土」を、「コンクリート」や「土」と比べてみると

 「コンクリート」は、材質、寸法、粒径の定められ、精選された粗骨材、細骨材、それらを適切に固化させるためのセメント、水、混和剤を目的に応じて配合し混合されたものです。そして、型枠内にびっしりと配置された鉄筋相互の、狭い空間に流し込める流動性を保った流状体で打設され、その後の、適切な養生によってセメントが骨材を緊密に固結させ、所要の強度を得て供用されています。 


 一方、「土」は地盤工学会の基準によれば、最大寸法が75mm以下を「土質材料」と称し、礫、砂からなる「粗粒分」と、シルト、粘土からなる「細粒分」に区分されています。ですから土と言っても10cm近い石塊から、ミクロン単位の細かい粒子までの、大きさ、性質、形状の、様々な塊、粒子が入り混じって構成されている、見掛けも、手触りも多様な混合物ですし、それらが時に応じて変わる含有水分と、密度との相関関係で強固な地盤から、軟弱な泥土の状態までの様々な挙動を示しているのです。ですから、「コンクリート」は立派な人工の構造材料で、「土」は砂利から土くれまでの多様な自然物として、両者はお互いに全く違うと見られてきました。


しかし、双方の構成材をセメントを除いて、固体粒子の構成から見ると、コンクリートの粗骨材は土質材料の礫に、細骨材は砂の範疇に属することになり、その面から見ればコンクリートの骨材は、品質、形状・寸法が定められた、土質材料中の精選されたエリートと見ても良いことになります。そしてその砂礫を、できるだけ密にセメントで強固に緊結したものが信頼度の高い「コンクリート」となるのだと思います。そうした目からは、締固め不要な「流し込み打設」が出来そうだからと、泥状土に固化材を混ぜるだけで打設してみようとの「流動化処理工法」は、まさに、”鵜の真似する鴉”の謗りを受ける懼れがないではなかったのです。


 ただ、唯一の心強い頼りは、ポルトランドセメントが開発される以前から、我が国では砂、粘土、石灰を混ぜて良く締め固めた三和土が随分と立派で、趣のある”たたき(敲土)”として未だに古い民家の土間で使われている立派な実績でした。


 こっそりと実験を試み始めて、データを集めている内に私達は不思議な感銘を覚え始めています。とにかく”泥”と固化材を混合すると、これから説明しますような、何か珍しさを感じさせる”締め固めた土”とは全く異なった挙動を示す、これまでにない、新しい建設材料「流動化処理土」であるとの息吹を感じているのです。
 言うならば「流動化処理土」は「コンクリート」でないことは勿論ですが、どう見ても、いわゆる「土」とは違っている、しかし、やはりどこか、「土」に似通った性質を示す、両者の「間の子」的な性格を持った、私達の身近にあったのに気づかなかった、新しい建設材料と分かってきたのです。

解説4
本当にどんな「泥土」でも固めることができるのか?

 昔、コンクリート工学の講義で、骨材は泥だらけだったり、粘土を含んでいてはいけないと、たっぷりと教わった私達は、泥状な土が固化材で本当に固まるものか、最初は半信半疑でした。しかし、有機物を含んだ汚泥さえも固めることができる、特殊なセメント系固化材が開発され始めていましたので、並みの泥ならば固められないことはなかろうと、実験してみて驚きました。

普通の粘土ぽい土を解泥した泥土は、勿論のことでしたが、最初から極端な例を揚げますが、水道の浄水場から頂いた上水の汚泥、これは色の真っ黒な全く水のような泥水で、含水比(含まれる水分の重量と土の固体分の乾燥重量の比)が1000%をはるかに越えるような汚泥でしたが、高含水比土用のセメント系固化材を加えますと図-1に例を示したような圧縮強さを示して立派に固まりました。 


図-1

 ですから粘性土に水を加えてよく攪拌して作った普通の泥土が、加える固化材量を加減すると、地山相当、あるいはそれ以上の圧縮強さに固まるのは当然でした。(図中のCは固化材のm3当たりの添加量「外割り」)


 しかし、試験の済んだ上水汚泥供試体を、室内に放置しておいて、自然に乾燥すると、当初のどす黒い色が失せて、驚くほど真っ白になりました。考えてみれば、この汚泥の中の固体分の占めた体積は0.1%にも達せず、残り総てが水分だったわけで、僅かな汚泥中の固体分と、相対的に多量な固化材と水によって構築された、繊維状に絡み合った多孔質な構造組織によって相応の強さの固体状を保っていたことになり、乾いた後の色の白さは、まさに量のはるかに多かった固化材の白さが際立ったわけでした。 


 これ程ではなくとも、細かい土粒子を豊富に含んだ粘性土から作った泥水のみにセメント系固化材を混合し、狭い空間にも流し込み易い流動性を持たせますと、固まった処理土の比重(湿潤単位体積重量/水の単位体積重量)は1.2~1.3程度なのが普通ですが、各成分の占める体積の割合を計算してみますと、8割強が水で占められる間隙であることが多く、実質的な固化材と土の固体分の占める体積の割合は、僅かに2割に足りません。


 しかし、これでも固まった流動化処理土の一軸圧縮強さは10Kgf/cm2(1MPa)程度ですから、それで造った構造体は、土の地盤としては相応の強さのしっかりしたもに思えてしまいます。

 一方、一般土木用のコンクリートの例と比べてみますと、打設時のコンクリート中の固体分(粗骨材、際骨材、セメント)の体積率は8割、空隙(水分と空気間隙)率が2割程度と、この例では流動化処理土の割合とちょうど、図-2に示したように逆転しています。


図-2

 勿論、両者の強さの差は大変、大きいことは言うまでもありませんが、普通の地盤や盛土の比重は、超軟弱地盤で1.35程度、よく締め固めた盛土では1.6~1.8はあるのが普通ですから、何か、流動化処理土のあまりに大きな間隙率が、かえって奇異に感じられ不安になります。泥土は確かに固まりましたが、これで「土」として本当に良いのでしょうか?

解説5
密度の高い、比重の大きな流動化処理土を作ることができるか、
また、なぜ、密度の高い方が優れているのか?

 砂礫分に富んだ別の建設発生土に、前と同じ泥水を湿潤重量比(p)で0.4程度の量を加え、固化材量は泥水に対して前と同じにして混練りしましたら、やや流動性が落ちた程度で同じように型枠に流し込めました。この両者の構成材の体積割合を比較すると、図-2のようになっていて、かなり普通の土並みの密度の処理土を作ることは確かにできました。しかし面白いことに、7日養生後の一軸圧縮強さは、密度が高くなった割には、両者とも殆ど変わりはありませんでした。 

 これは粗粒分を増やし、密度が高くなると固化材量が少なくても必要な強さが得られそうな可能性、あるいは土の細粒分からなる泥水への固化材量によって、粗粒分も含んだ処理土の全体の強さが支配されるのかとも想像されます。


図-2

 ですが、我々は努力すると、比重の大きい密実な流動化処理土を造ることは確かに可能であることは間違いありません。ところで、昔から「土は良く締め固めろ」と言われてきました。さて、新しい土とコンクリートの「間の子」的材料である流動化処理土についても、その伝統的教訓が当てはまるのでしょうか。
 コンクリートでは円柱形の供試体を軸方向に潰す「圧縮強度」が設計に用いる力学的指標として活用されてきました。地盤・土質工学でも同じ手法の試験を、あえて「一軸圧縮試験」と名付け、試験が簡便である故に、その破壊強さを「一軸圧縮強さ、qu」と呼んで、それを設計・品質管理に便利に使ってきました。しかし、同時に我々は難しい設計条件での検討には、所要の拘束圧下での破壊挙動を知るための「三軸圧縮試験」に頼ってきたのも、コンクリートの場合と違った特徴的事実です。


この違いを質すにはコンクリートが主に、構造部材を造るのに用いられる強度の高い材料であるのに対して、現時点においては、流動化処理土はやはり在来工法での施工ができない場合の、盛土、埋戻し・充填を期する盛土、あるいは地盤を構築する材料であるとの、性格の違いを先ずはっきりと認識すべきであると思います。
 梁や柱、版を主体とする構造部材の設計には曲げ、挫屈、圧壊に対する抵抗力を知らねばなりません。その際、コンクリートでは、実用上、簡便な圧縮試験による破壊強度から類推される曲げ強度で判断できますが、一方、土の場合は盛土、地盤が上載荷重を支え得るか否かの、その支持力の判定が求められます。


 支持力は載荷面下の土の周辺地盤から受ける拘束圧のもとでのせん断強さから想定することになり、単に一軸圧縮強さだけでは不十分で、三軸圧縮試験の助けを借りなければならぬ場合が生じることになります。  流動化処理土の利用される埋戻しでは、一般に土被りが浅いから、拘束圧はそれ程、問題にはならないではとのご意見ももっともです。しかし、地震時などの非常事態においての、周辺の原地盤との相互作用を考えますと、そう簡単に済ませてしまって良いかとの疑問を感じ始めています。

三軸圧縮試験を行って見ますと、一軸圧縮強さquが同じ流動化処理土でも密度が低いものと、高いものとの差が、図-3のように明瞭に表れてきます。低密度の流動化処理土は一軸圧縮試験の歪み1%位でピーク値であるquを越すと脆く破壊してしまいます。
 しかし拘束圧が増すとピーク値では大きな差はないが、それを越えた後の破壊に至るまでの、残留強度がかなり持続しています。また、ほぼ、同じ一軸圧縮強さを持つと見なされる高密度の処理土の場合には、拘束圧の増加によって残留強度の存在がはるかに顕著に表れてくるのが分かりました。


図-3


 また、一軸圧縮の際でも、破壊しそうになった後でも、直ぐ壊れずに、以後の歪みの増加に耐えて、少しでも強度を保ち続けようとする領域が、しばらく続いているように見えることは一般の土にはあまり見られない挙動でした。
 地盤は脆くなく、完全に壊れてしまうまでにかなり粘り強い抵抗を示してくれることが望ましいのは言うまでもありませんから、この場合、やはり可能な限り高密度な処理土を造ることに努めることが、やはり必要であると信じています。

解説6
粘り強い流動化処理土を造るには他に方策があるか?

 本来の強度はそれ程大きくなくても、変形に対しての粘り強い性能を持っていることは、上載荷重を何としても支持しなければならぬ土構造物としては、大変、望ましいことです。流動化処理土については前述のように、土一般でえるように、まず、密度を高めることが求められました。

 しかし、それを補う手段として、比較的、低密度の泥水に対して、例えば古新聞紙片を水に解いた繊維質材を混ぜますと、図-4 に示しましたように一軸圧縮試験の際、破壊領域に入ってからの残留強度の維持領域を保つことができるのが分かっています。

 図-1の、浄水場の汚泥を固めた超低密度の流動化処理土の例で、quに達した後に、かなりの残留強度の持続が見られたことは、原水中の固体分中に上流地域の植物繊維片が卓越していたためではないかと想像できます。

 また、粗粒分に対して、細粒分が少な目な泥水で流動化処理土を造る際は、泥水中の水の分離(ブリーディング)が懸念されます。繊維質の混合は、ブリーディング率の減少に効果のあることも、既に確かめられております。
 流動化処理土地盤の支持力に対する貢献度は、平板載荷試験によって、密度増、繊維質混合、両者とも見られる傾向は確かめていますが、構造物設計における広範な検討に用いるためには、流動化処理土の動的性質の究明を含めて、今後、更に研究を続けて行きたいと思います。

解説7
流動化処理土の耐久性は?

 セメント、石灰等の固化材によって土質安定処理、地盤改良されたものが、どのような耐久性を持つものかの判断は、適切な養生環境のもとでは、強度的には増加の継続は見られるのが常識で、劣化することははないと言われています。流動化処理土はそれらより更に歴史が浅いわけで、長期にわたる実績は持っていませんが、セメント協会における継続中の観測資料では、関東ロームの地中に埋設された流動化処理土柱の打設後5年経過のデータでは、引き続き強度増加を示しています(近く10年経過の調査が行われる予定です)。 


 また、円柱形の供試体を用いての3年間の継続観察によれば、土中養生の方が固化の進行による強度増が進行しているのに対し、水中養生ではセメント成分の溶出のためか、寸法の小さい供試体では強度が減少したものも見られた実験例も報じられています。これらの例からも類推されますが、流動化処理土はコンクリートのように、大気中、あるいは水中に露出させて機能させる性質ものではなく、地盤、あるいは盛土中に埋設された条件で使用すべきものと考えます。

配合設計・品質管理のためにどのような試験を行うか?

 まず、使用目的に合致するような流動化処理土を得るために、流動化処理土を構成する主要な三要素である、
「調整泥水」、「建設発生土」、及び「固化材」をどのように配合したらよいか、決めることが必要です。更に必要に応じて添加剤、補強材を配合することもあり得ます。この作業を「配合設計」と呼び、重要な試験であることは言うまでもありません。
 また、決まった配合通りの製品が間違いなくプラントで製造されているか、現場に打設されているかを確認するための「品質管理」も、勿論、大切です。 詳細については、次の各項目をご参照下さい。

解説8
流動化処理土の配合設計とは

流動化処理土の主要な構成材料としては

「 調整泥水 」

 細粒分の多い粘性土を清水と混合して解泥した「泥水」や、有害な汚染物質を含まぬ「建設泥土」、あるいはそれらにに必要に応じて、さらに適切な細かい粒度の土を添加・配合して、比重などを調整した「泥状土」

「建設発生土」

 流動化処理土を地盤、土構造物として持つべき所要の工学的性質を満たすため に、「調整泥水」に必要に応じて、更に添加、混合する、より粗粒分からなる土質材料(砂礫質の建設発生土、あるいは土取り場から採取した砂礫質土)

「固化材」

 セメント、セメント系固化材、石灰、セメント・石灰複合系の「固化材」及び 必要に応じて添加する「混和剤」


 これらを混合して、施工に適した流動性を保ち、適切な養生後に、地盤・土構造物としての設計目的に合致し得る所要の工学的性質が得られるような配合量を決定するのが配合設計のための試験です。なお、施工に際しての品質管理の基準値を定めることも配合設計の重要な役目です。
 以上が流動化処理土の配合設計の主目的ですが、この他にも流動化処理土の性能を補完するために各種の繊維質などの「補強材」など、今後、需要に応じて色々な添加物の配合が試みられることになりますが、その場合は、効果を満たすための配合の調整が必要であることは言うまでもありません。

解説9
配合試験にはどのような試験が必要であるか?

 流動化処理土はプラントで製造、運搬し、現場に打設する時に、完全な充填が可能な(1)流動性があり、しかも(2)材料分離抵抗性があること、そして適切な養生によって供用開始時に、所要の力学的性質を持つ固化が進行しているかどうかを確かめる(3)強度試験が必要です。
 また、流動化処理土は、前述のように調整泥水、建設発生土、固化材を主体にした混合物ですから、それぞれの材料の性質・性能、含水比、単位体積重量、混合割合に応じた混合物の単位体積重量、含水比を知っておくための土質試験・材料試験も必要です。


写真-1

 (1)~(3)については流動化処理土のためだけに用意された試験法ではなく、既に他で用いられていた試験を流用している現状です。
 配合された処理土の密度(単位体積重量)の測定には、泥状土であるため、写真-1に示した要領で、既知の容量の容器に満たした処理土の重量を測定する方法が用いられています。 

(1)流動性の測定


写真-2

 流動性の高い泥状の混合物の流動性判定にはPロート試験(JSCE-1986)が用いられますが、流動化処理土の場合はフロー試験が妥当と思います。フロー試験には「セメントの物理試験方法(JIS R5201-1981)」の土木学会規準の方法、並びに「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHS A313-1992)」の日本道路公団規格の試験法が用いられていますが、装置並びに取扱いが簡便な後者が、最近は広く使われています(写真-2)。

(2)材料分離抵抗性の測定


写真-3

 流動化処理土の混合、運搬、打設の過程で固化以前に処理土中から、過剰に水の分離(ブリーディング)が見られないように、その程度を検証する必要があります。
 この測定には「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率及び膨張率試験方法(JSCE-1986)」の土木学会規準のブリーディング試験方法を準用 しています(写真-3)。

(3)力学試験


写真-4

 配合設計、品質管理の指標的な役割を果たしている簡易な力学試験として、地盤工学会基準の一軸圧縮試験(写真-4)が広く用いられています。原則として湿潤雰囲気養生7日、28日(必要に応じて1日、3日を加える)後の側方非拘束の圧縮強さquが力学的性質の指標として活用されています。しかし、流動化処理土の特性を対比するためには、単にquだけでなく、応力~歪み曲線の形状を対比することが、より有益な判断材料になりうると思います。

 しかし、流動化処理土に、より重要な機能を求める場合、あるいはごく低密度の処理土を用いる場合などでは、拘束圧下の挙動を確かめるために三軸圧縮試験での検討を必要とすることが望ましいと思います。

(4)土質試験・材料試験その他

 流動化処理土の配合設計の際には、各構成材料及び配合された処理土について、少なくとも、それぞれ次の諸量を正確に測定しておく必要があります


「調整泥水」 泥水の湿潤密度(単位体積重量、比重)・含水比・土粒子の密度(比重)
「建設発生土」 含水比・土粒子の密度(比重)・粗粒分の含有率(%)・調整泥水との混合の割合(湿潤重量の比率)
「固化材」 固化材の密度(比重)・添加量


 固化材を除き、一般の土質試験法によって行いますが、固化材の密度測定は土質試験は適用できませんから、メーカーの資料を参考にすることになります。

 なお、一般にセメント等で土質改良をする場合、室内配合試験と実施工時との混合の精粗を斟酌して、固化材量の割り増しを行うのが慣習的に行われていますが、「流動化処理工法」の場合は室内配合と、プラント混合とに殆ど、差が認められませんので、そう言った観点からの固化材量の割り増しは不要と思います。


写真-5

 その他、固化後の流動化処理土の遮水性を検証するための透水試験は、固化過程での僅かな収縮があり得ること、及び流動化処理土が一般に難透水性(透水係数が10-5~10-7cm/sec)であるため、普通の透水試験機での測定が難しい場合が多いと思います。
 そこで、図-5のような、円盤形の処理土供試体を用いて、放射状に水を浸透させる、変水位透水試験器で試験を行い、ほぼ、満足できる結果を得ることできました。

 ”これらの詳細については、土の流動化処理工法(建設発生土・泥土の再生利用技術)「技報堂出版」をご参照下さい。”

(5)配合した流動化処理土について必ず記録しておきたいこと

 処理土の構成材料のそれぞれについて、前項(4)に記した諸量は混練りの際にかならず必要であることは言うまでもありませんが、配合が決まった「流動化処理土」について、品質管理上大切ですから、次の事項は必ず記録して下さい

含水比 / 密度(単位体積重量) / 流動性(フロー値) / 材料分離抵抗性(ブリーディング値)
強度(一軸圧縮試験の結果:応力~歪み曲線、qu 、養生期間は7日、28日を選ぶことが多い)

解説10
品質管理にはどのような試験がおこなわれるか、そしてその頻度は?

 配合設計通りの流動化処理土が製造され、現場において間違いなくそれが打設されたことを確認するための試験が品質管理試験です。
 試験の実施はプラントからの出荷時の製品、現場に運搬され打設する際の製品が、間違いなく配合設計時の品質と同じであることを確認するために、適切な頻度で、可及的速やかに検証することが求められます。
 流動化処理土は調整泥水、又は調整泥水と建設発生土を混合した「泥状土」と「固化材(あるいは必要に応じた添加物)」を配合したものですが、混合した後の泥状の状態での、個々の混合割合が配合設計通りになっているかを、量的に判別することは実際上、不可能です。よって、一般に製造された「流動化処理土」の密度(比重)、流動性(フロー値)、材料分離抵抗性(ブリーディング)並びに固化後の強度(一軸圧縮強さ)によって確認することになります。(頻度は少なくても良いと思いますが密度測定の際、含水比を測っておくと、建設発生土の性質が極端に変わった場合等の異変を検証する際に役に立ちます)


 この四者が配合設計の際の数値と極端に相違しない限り、配合設計通りの製品が間違いなく打設されたと確認できると信じます。この中でも密度、流動性、強度に集中的に気を配るのが能率的な品質確認になると思います。


 品質管理試験の頻度は、現在では生コンクリートの実績に準じて、プラント出荷時、現場打設時の試料について品質管理試験が行われていますが、現場混合の場合は勿論のこと、流動化処理工法の場合は、出荷時と運搬時の製品は変わりようがなく、更に、コンクリートの場合よりは、強度等の厳密性の要求度が低いことからすれば、プラントから出荷する際の上記、品質管理試験を重点的に行い、打設時においては、密度、流動性の確認程度に留め、試験に時間と手間を要する一軸圧縮試験はプラント出荷時のみに限ると言った簡素化を計った方が能率的と思われます。 

 試験頻度については、「流動化処理土利用技術マニュアル(建設省(現:国土交通省)土木研究所)」によれば、次のような基準的な測定回数が推奨されています

密度(単位体積重量) 1回/50m
フロー値の測定 1回/50m
ブリーディング率 1回/日
一軸圧縮強さ

1回(3本)/日

(前にもふれましたが、この他に処理土の含水比を測っておくと良いと思います)

流動化処理土をどのように製造するか?

 流動化処理土を製造するには、一般的に「調整泥水」、「建設発生土」、「固化材」が必要です。更に添加剤、あるいは補強材が必要なこともあります。、これらを決められた配合通りに、均質に混合しなければなりません。
 そして、「調整泥水」、「建設発生土」の供給体制や、使用される工種、現場の状況に応じて、もっとも能率的な製造工程を選ぶことが必要なことは言うまでもありません。流動化処理土の製造の工程を模式的に説明すると次の通りです

なお、混和剤、あるいは補強材等を混合する必要のある場合は、
その作業に必要な設備を追加する必要があります。


 流動化処理土の利用される現場は、コンクリートの場合と比べると、比較の対象にはならないくらい多様です。処理土自体の性能からしても捨てコンクリートに近い高級なものから、並みの沖積地盤対応の均質な埋戻しでよい場合まで、非常に広い範囲に渉ります。従って、品質管理の厳密さも担当者の技術的判断に待つ面が多いと思います。例えば構成土質の変化を色調の変化で察知し、その際には集中的に管理試験の頻度を増すといった柔軟な配慮が求められるべきだと考えます。


 また、品質管理とは言えないかも知れませんが、流動化処理土を打設して、つぎの作業上、打設面に作業員が載れるかを判定すべく、その固化の進行度を知りたくなります。簡易な判定法の一つとして土壌の硬度を測定できる、一種の簡易貫入抵抗測定器である、「山中式土壌硬度計」が活用された実施例があります。

製造行程(A)
「調整泥水」を自ら製造し、「砂礫質の建設発生土」を配合する場合

 まず土取り場、建設発生土などから得られた、細粒分が多く含まれた粘性土を解泥し「調整泥水」を製造します。その際、無用な夾雑物は解泥機に送る前に除去する作業が必要があることは言うまでもありません。続いて砂礫質の建設発生土を配合し、更に固化材を加えて混練り機で均質に混合し、所要の品質の「流動化処理土」を製造します。
 この場合のプラントの構成は図-1のAの通りです。

「調整泥水」を自ら製造し、「砂礫質の建設発生土」を配合する場合
図-1A 「調整泥水」を自ら製造し、「砂礫質の建設発生土」を配合する場合

製造行程(B)
細粒分からなる粘性土を解泥した「調整泥水」に、「固化材」のみを配合する場合

  使用する条件により、粗粒分からなる「建設発生土」の配合による強化を必要としない場合は、図-1のBに示すように、プラント構成は「砂礫質の建設発生土」の供給システムが必要なくなります。 

細粒分からなる粘性土を解泥した「調整泥水」に、 「固化材」のみを配合する場合
図-1B 細粒分からなる粘性土を解泥した「調整泥水」に、 「固化材」のみを配合する場合

製造行程(C)
泥水の供給を受け、それにより「調整泥水」を製造し、「建設発生土」を配合する場合

 汚染されていない泥状土の供給が得られた場合、夾雑物の除去後、「泥水」の密度(比重)調整を施すだけで「調整泥水」が得られるため、プラント構成は図-1のAから粘性土解泥装置を省いた図-1のCのように簡略されます。

泥水の供給を受け、それにより「調整泥水」を製造し、「建設発生土」を配合する場合
図-1C 泥水の供給を受け、それにより「調整泥水」を製造し、「建設発生土」を配合する場合

製造行程(D)
泥水の供給を受け、それにより製造した「調整泥水」に、「固化材」のみを配合する場合

 (C)の場合、(B)の条件と同じように「建設発生土」配合による強化を必要としない場合には、プラント構成は図-1のDに示すように、更に簡略化が許されます。

泥水の供給を受け、それにより製造した「調整泥水」に、「固化材」のみを配合する場合
図-1D 泥水の供給を受け、それにより製造した「調整泥水」に、「固化材」のみを配合する場合